あごひじきのひじきです。
アッヴィは2016年に特許切れとなった関節リウマチや乾癬などの自己免疫疾患の治療に用いられるヒュミラが売上の6割を占めており、欧州から5社のバイオシミラー(バイオ後発品)にその立場を奪われつつあり、さらに2023年には米国からのバイオシミラーが競合として現れると懸念され、同社の株価が暴落しています。
しかし、特許切れでもアッヴィはヒュミラから依然として高い利益を得ており、業績も右肩上がりで衰える兆しを見せません。
さらに、アッヴィは2018年には大幅な増配をしており、同社の自信が伺えることから
- 同社の強みはなにか?
- なぜ強気姿勢を維持できるのか
を調べていたら、そもそも特許切れを迎えても、ヒュミラを始めとするバイオ医薬品に対する影響は限定的であり、今後も地位を維持できることがわかったのでその理由を書いていきます。
結論から言えば下記のことが挙げられます。
- バイオ業界特有の参入障壁の高さ
- ヒュミラ・インブルビカが主力製品となる
- アラガン・mavuphama買収によるパイプラインの強化で基盤強化
今回は第一弾としてバイオ業界特有の参入障壁の高さについて書いていきます。
特許切れバイオ医薬品に”ジェネリック医薬品”の驚異はない
なぜ、バイオ医薬品はジェネリックの驚異はないのでしょうか。
その理由はそもそもジェネリックとバイオシミラーが異なるからです。
ジェネリック医薬品とは
そもそもジェネリック医薬品とは低分子医薬品の後続コピー製品です。
低分子医薬品とは、少ない分子量(100以上)で構成され、化学合成によって作られた医薬品です。
100以上の単純な分子構造によって作られているため、化学合成によって比較的簡単に作ることができ、同一成分・同一効果を得ることが容易です。
そしてそのジェネリック医薬品は同一効果・成分を備えているため、必要な試験も新薬に比べて圧倒的に省くことができます。数千万円程度の開発費で作ることができるので、薬価も新薬価格の2-5割程度と安く抑えることができ、患者の負担軽減にも繋がります。
バイオシミラーとは
一方、バイオ医薬品は複雑な分子から構成されていて、ホルモン系で1万、抗体になると10万以上の高分子で構成されます。
アッヴィの製品であるヒュミラは”抗体”に分類され、14万を越える分子量で構成されています。
ヒュミラのような抗体のバイオ医薬品の製造方法は特に複雑で、微生物や細胞の中で合成されるため、生体の状態によっては異なる生産物になりうるなど簡単に真似ることができません。
さらに複雑過ぎる構造から似通った分子構造ができても、同等の性能・安全性などを備えていることが証明できなければバイオシミラーは当局の承認を得ることができず、新薬と同等の試験工程が必要となるのです。
加えて、バイオシミラーが先発医薬品と比べ”同等の分子構造”であるということは”全く同じ”ではないため、医療機関はデータの揃っている信頼性の高い従来の先発バイオ医薬品を採用しがちなのです。
上記の理由から研究開発費も数十億円と高額になるのですが、薬価は70%~77%程度と正規品よりも安いため利益率も低く、特許が切れても依然として参入障壁が高いままなのです。
特許による保護
製薬業界では、アッヴィのヒュミラのように少数の製薬に売上を依存している会社が少なくありません。そのため薬の特許は会社にとっての命綱となるので、自社の薬を保護するため周辺の特許を固める傾向にあります。
周辺の特許とは製法や製剤化に関する特許のことで、この周辺の特許が残っていれば薬自体の特許が切れたとしても自社の強みとなる薬を保護することができるのです。
将来の売上トップ医薬品
上記のような参入障壁が高いことを証明するように、EvaluatePharmaの調査では、2024年の世界売れ筋医薬品トップ5が発表されています。
そのなかで「ヒュミラ」はメルクの「キイトルーダ」に次ぐ2位となっており、バイオ医薬品業界の参入障壁の高さが伺えます。また、アッヴィの持つインブルビカも売上高が昨年の45億ドルから24年には94億ドルにのぼるとされており、同社の企業価値は現在割安水準であると私は考えています。
- バイオ医薬品の後続品はジェネリック医薬品ではなくバイオシミラー
- バイオシミラーは先発品と同等の試験が必要だが、販売価格は7割程度と安価
- 医療機関は品質が異なり、データ不足のバイオシミラーを副作用の観点から導入しづらい。
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